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女だから言えること | 引きこもり、精神病からの生還

太ったおじさんみたいなおばあさんの皮肉とメロドラマに満ちた遺言。

精神病に対する正しい知識(現場50年の看護師の話

 

 私は10代後半から精神病についてすごくまじめに勉強しています。そして、日本の精神医療・心理学の進歩はものすごいスピードで進んでいます。精神科の看護師を50年以上やっているという70歳くらいの女性とお話できる機会があったのですが、「今は、精神病は治る人が多い。」と、おっしゃっていました。

 

 私自身の個人的な見解でも、諸条件が揃えば一部の精神病は治ると結論づけました。
2015年の私の体感としては統合失調症、躁鬱、うつ病は治りやすく(中度までに限る。重症になると無理かと…)、人格(パーソナリティ)障害や発達障害は治療に時間がかかるというのが体感値です。

 


■精神病棟の看護師の話

 昔は精神病の病名が少なかったそうです。これも私の体感値ですが、現:双極性障害(旧:躁うつ病)と現:統合失調症(旧:精神分裂病)といった病名しか庶民レベルでは耳にすることすらありませんでした。

 

現代の医学では精神病治療は、精神疾患のみならず、発達障害、人格障害も含めて診断され、治療法が提示されます。ですが、この診断が非常に難しいという現実があります。精神疾患、人格障害、発達障害を同時に併発していたりする場合もあるからです。

 

 例えば、2015年の現在なら「自己愛性パーソナリティ障害+双極性障害」と診断されるべき人が、1980年くらいだと旧:精神分裂病(現:統合失調症)と診断されていた、つまり、間違った病名をつけられていたのです。そして、間違った治療を受けざるを得なかったのです。

 

 これは、誤診といったようなことでなく、単純に日本の精神医療が進んでいなかった、という、一点に限られると感じます。上記の現場50年の看護師さんの話によると、そういう意味合いにとれました。とにも、かくにも日本で知られている精神病の病名自体が少なく、その数少ない病名の中に無理やり当てはめるような診断の仕方をしていたというような意味合いの話しだったと思います。

 

 現在、例えば統合失調症は劇的に効果のある薬が見つかったり、その他の疾患も様々な薬を、その患者さんにオーダーメイドで処方する仕組みになりつつありますが、20年ほど前には精神病全般を治癒させるような薬は存在していなかったと考えられます。


 ですが、精神病者は一日中どなりちらしたり、家族や近所に暴力を振るったり、暴れたり、近隣の家の物を盗んだり、もう行動が奇怪そのものでした。困りあぐねた家族は、当然、精神科医に頼りました。そして、なんだか良く分からない鎮静剤のような薬で、おとなしくさせていたのです。私はお薬にはうといので、どんな種類の薬だったのは、よく分からないのですが、確かにおとなしくはなりますが、その薬を飲まされ続けると廃人のようになっていく人も少なからずいらっしゃいました。

 

 かわいそうな話ですが、医療が進んでいない昔は、暴れる人は薬で廃人にさせるしかなかったのでしょう。何をしでかすかわからない、犯罪をおこすかもしれない、人を殺すかもしれないという危険は確かにあったのです。その現実を知らなかったことにして、人様を薬漬けにするのは、良くない、というような偽善じみたことを私は、とても言えないのです。

 

ですが、そのキャリア50年の看護師さんの話によると、最近は精神医療が進み、正しい診断をされ正しい治療を受け、治る人が増えているのだそう。現場の歴史を知る看護師さんが言うのだから間違いないでしょう。

 

 実は精神病の診断はオーダーメイド。内臓の病気とかと違って、精神疾患、人格障害、発達障害などの症状を一手に引き受けて診断するのが精神科の仕事。「ちょっと統合失調症が入った境界性」とか「自己愛性がちょっとと、演技性が強めの人格障害プラス中度の統合失調症が入ってる」とか、その人その人のよって、どの病状がどのくらい入っているか違うのです。ですので、どの病気がどれくらい入っているかで、薬の処方や、カウンセリング方法、生活技能訓練法を微妙に調整しなければならないのです。そこまで、見抜ける医師、そしてオーダーメードの医療サービスを提供できる病院に出会えるか、出会えないかは、実際のところ運によるところが大きいと感じます。

 

 残念ながら、こういった、精神病治療の知識をお持ちでないご家族が非常に多く、早めに良い病院に患者を入院させるなどの措置を取れず、重度までこじらせてしまうパターンも時折、見かけます。なおかつ精神疾患の患者自身は、みずから進んで病院に行きたがらなかったりするので、治療に必死になるのはむしろ家族のほうというのも精神疾患あるある。

 

かといって、かなりの時間を患者と共にする家族に対して、オーダーメイドの対処法を細やかに教えてくれる体制はまだ存在していないという寒々しい現実もあります。家族は家族で、本を読んだりして勉強するのでしょうが、正直、書店や図書館においてある精神医学の本は何年か前のものであったりして、すでに情報が古い場合も少なくありません。治る病気を治らないと書いていたり、もう現在では否定されている昔ながら精神論的な対処法の本なんかもあって、あれでは家族は混乱するというのが私の思うところです。

 

精神病は治るのに。。。私はいつもそう思います。

 

 精神疾患患者の病名は、高い精神医療の知識を持った人物が、最低でも2週間くらいは、その患者の生活様式、行動パターンを見守らないと見えてきません。一日中、生活スタイルを観察して、どういう状況になるとどういう行動をとるのか、データをとらないと正しい診断がつきにくいのが精神病であったりするのです。

 

 医療レベルの高い精神病棟に入院させれば、看護師が患者の動向や行動パターンをつぶさに観察し、医師に報告し、医師が病名を判断し、正しい治療法を見つけることができます。ですが、精神科の看護師は仕事がキツくて「離職率が高い=新米看護師ばかり=精神医療知識が乏しい」ことも少なくないのが現実です。ベテラン精神科看護師のいる病院なうえに、その報告から正しい診断を下せる医師がいるくらいの高度の医療レベルの病院を見つけるのは至難の技かと。

 

 精神病は本当は治るのに、治らない人が多い理由。
 それは、精神病者の治療は何人かの専門家が数年から数十年わたって、手厚いケアをしないと寛解がむつかしいからです。医師や看護師が、毎日一人ひとりのオーダーメイドの症状のケアできるわけがない。病院経営が破綻するから。

 

 かといって、家族全員が精神科の看護師レベルまで、知識や作業水準を上げるというのもなかなか難しいでしょう。そんな、教育体制もなければ、それほどの治療レベルの精神病院が日本国内にどれくらい存在するかは不明だからです。

・高い精神医療のレベルのある精神病院
・地域の支援体制
・家族の高度な精神病知識とケアスキル
・患者の家族同士が支え合える「家族会」(これが非常に重要)

 

これら全てが揃えば、数年から20年くらいはかかるが精神病は治るのです。ですが、耐え切れず一家離散になる、あるいは患者のケアに疲れ果てて、家族全員が精神病やその他病気になり全滅するケースが非常に多いのが現実。

 

どうして、こんなことを書くのか、こんなに詳しいのかというと、私の父親が統合失調症で、私が19歳の頃に死んだから。そして私自身は、重めの精神疾患を患ったにもかかわらず、全く正常な人間として普通の生活にもどれたから。

 

 明暗を分けたのは精神医療の発達。父の時代に今の医療や公的支援があれば、今頃、父は生きていたかもしれない。

 

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