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女だから言えること | 引きこもり、精神病からの生還

太ったおじさんみたいなおばあさんの皮肉とメロドラマに満ちた遺言。

今、この瞬間の夫へのラブレター★多分明日には気が変わってるだろうから。

 

 

「ずっと、このままならいいのに。。。」

朝方、夫が布団の中で私にピッタリとくっついたまま言った。ラブラブ自慢とか、そーゆーことではなく、このまま、仕事に行かずに寝ていたいよぅー。そういう意味だったかもしれない。

 

私達夫婦は一緒に暮らし始めて六年強。

 

幸せ過ぎて怖い。映画、「髪結いの亭主」ではそのような理由で妻がある行動をとってしまう。今となっては、その意味も分からなくもない。夫も今、そのような心持ちになっているのかもしれない。もちろん私も。

 

親と縁を切れば幸せになれるはず。大学に行けばお金を稼げるようになれるはず。外国に住めば視野が広くなるはず。どれも、挑戦してみたけど、思っていたのとは違った。

 

働き始めてすぐに、女上司が、もっと上の上司に言われていた言葉を私は20年以上過ぎた今も忘れていない。

「働く女は、男と宗教(にハマること) に気を付けろ。」

私は、その時、その言葉を女上司の横で聞きながら、まったくその通りだと思っていた。生きることはつらい、本当につらい。だから、恋や宗教のようにエキセントリックなものにハマったほうが、どんなに心が軽いだろうか。だからこそ、ハマっちゃだめ!って、漠然と想像がついてしまっていた。

 

だけど、40を過ぎて、今、現時点で、私に救いを与えてくれているのは「般若心経」と「夫」、つまりは宗教と男だ。皮肉なもので、30代中盤辺りから精神崩壊の危機を迎えた私がすがりついたのは、あのとき絶対にハマるなと言われていた2つだった。

 

わずかな収入で、天井はベニア板、風呂はバランス釜、寒くて寒くて凍えそうな隙間風の入り込むオンボロアパートに住む生活。光熱費節約のために、出来る限り暖房は付けず。家の中でもダウンジャケットで耐える生活。流石に夜は気温が下がるから、一つの部屋だけエアコンを付けて眠る。ベッドなんて気の利いたものはないから、せんべい布団を2つ並べて、身を寄せあって眠る。

 

経済的に地獄を見たときもあった。お互いに精神的にボロボロの時期もあった。精神科医の献身的な支えや、公的支援で、なんとかやっと持ち直した私。そして、私に巻き込まれなければ、中流の家庭でボンボンとして生きることのできた夫。

 

それでも、せんべい布団のうえで、自分のおでこを私のおでこにコツンと当てて、

「ずっと、一緒だよ。」と、つぶやく夫。

 

夫よ、本当にいいのか? 

中年の精神病のおばさんと結婚しなければ、あなたにはもっと違う未来があったかもしれない。子供も持てたかもしれない、妻の体調を毎日心配しなければならない日々ではなかったかもしれない。

 

夫よ、本当にありがとう。

これから先、何が起こって、二人がどうなるかなんて誰にも分からない。どちらかに好きな人でもできて別れたいってなるかもしれない。今よりもっと貧乏になって、心まで貧しくなって、いがみあって罵り合って別れてしまうかもしれない。あるいは、明日、どちらかが死んでしまうかもしれない。それでも、今、この今を支えあって生きていることに、目をやって、「ずっと一緒にいようね。」って言ってくれる、あなたの真っ直ぐで、素直な若さに、私は涙ぐんでうつむくことしか出来ない。

 こんな妻で、ごめんね。夫よ。