女だから言えること

「差別意識」は発達障害/機能不全家族/虐待/ジェンダーと密接につながっている

精神科医の苦悩

 私には一人だけ精神科医の知人がいる。利害関係がないので互いの心情を率直に打ち明けあえる。

 先方は50代のおじさんで、私は歳の近いおばさんなので、互いに気安くタメ口で話せる仲。私自身が精神病闘病経験者で父が重度の統合失調症だったということもあり、細かい話も通じて楽しい。

 彼とはかれこれ10年?くらいの知り合いで、私は〇〇先生と呼んでいて、彼は私のことを「らら(本名のファーストネーム)さん」と呼んでいる。互いの連絡先くらいは知っているが、特に連絡する必要もないので、連絡したりされたりしたことはない。けど、まあ仲良しだとは思ってる。

 出会って3年目くらいだったろうか、私が精神科医に聞いてみたかったことを聞いてみた。私の父親のように、重度の精神疾患などで、助ける(手助けしたり、自立する)のが不可能な患者達のこと。あれくらい重度だったり、社会参加の難しい人達について、精神科医である彼が、どう感じているのかを聞いてみたかったの。精神科医のひとつのサンプルとしてね。

 彼自身は自分の家族に問題があって、早い段階で精神科を勉強したいと思ったそうで、大学に入るときも精神科しか眼中になかったそう。そして、彼は50代の今でも、本気で患者を救いたいと思い奔走している人。

 私も自分自身の様々な活動で、私のやっていることは無駄なのだろうか?こんな努力をしたとこで、私程度の力じゃどうにもならないのだろうか?と、自分の無力さを感じている時期だった。そして、会う機会があれば彼にも私の活動の流れや、それに対する私の心情や悩み事を話していた。

 だからこそ、彼のような立場の人が、自分の無力さと、どう向き合っているのか、聞いて、自分の闘いの糧にしようと思ったのだ。

 

「ねえねえ、1つ質問があるんだけど、精神科医として、なおかつ組織を束ねる側にあって、自分の(社会、医療、患者に対する)無力さを感じる時ってあると思うの。そういう時に、あなたはどうやって、自分の体勢を立て直すの?」

と聞いてみた。

 

 

すると彼は、少し涙ぐみながら

「私個人は、精神科は、医者の中でも患者を救える確率がものすごく低い分野だと感じてる。助けたいと思っても助けられない事が多い。

 患者を治したい!患者を救いたい!と大きな夢や希望を持って精神科医になった人ほど、精神医療の現実を見た時の、失望の度合いが大きいのではないかと思う。それでも、私達精神科医は、一人でも多くの、通院を続けてくれる患者さん、良くなっていってくれる患者さんのほうを見て頑張るしかない。

 だから、あなたからの質問への回答は、『良くなっていく人のほうをみる』です。」

と言った趣旨のことを、答えてくれた。

 

私は彼の渾身の回答に、どう返事をしていいか分からず、

「そうですか、分かりました。ありがとうございます。」

とだけ言った。

患者自身が病気に偏見を持ち通院しない現実

 精神科は、精神科に対する本人や周囲の偏見からか、体の病気と違ってその深刻さが認知されにくいと私は感じている。私自身も時代が古かったとはいえ重度の統合失調症の父親に対して適切な対応はできなかったし、患者本人は病院に行きたがらない上に、なんとか行ってもらっても自ら治療をやめてしまう。そんな話は精神疾患患者や家族の周辺では良く聞く話だったりする。

 そして、精神科医の指示をきかない、精神科医の言い分を信じない人も多い。怒鳴られることなんてザラだろうし、医師に暴力を振るう患者さえいる。だが、彼らは何も言えない。守秘義務があるし、医学部時代に医療倫理や道徳をしっかり学ぶからだ。耐えるしか無いのだ。

患者の言動に苛立つ精神科医たち

 そして、きっと、人間の闇の部分や、どうにもならない部分を見すぎて心が折れてしまう医師もいると思う。そして、そのような医師が患者の気持ちには寄り添わない、事務的な診療をする医師になっていくのかもしれない。知識や経験がたりないのか、気持ちの持って行き場がないのか、患者を小馬鹿にした態度をとる精神科医だって存在する。だけど、私はそういった精神科医に腹立たしくは思うが、責める気にはなれない。精神疾患、発達障害、人格障害の人達の相手ばかりしてたら、そりゃ心も折れるよ、と思えるからだ。仕方のないことだと。私自身も統合失調症の父と18歳まで暮らしていて、父を見下すことでしか心を保てなかった過去がある。だから人のことを言えた義理じゃないという意味で、精神科医を責めることはできないというのが本音かもしれない。

 だが、まあ、そのような医師に自分の身を任せる気にはなれないというのも本音なので、難しいところだ。

 

 彼のように希望を捨てず、患者のために奔走している精神科医もいる。精神医療に関する、医師、心理士、患者家族を中心とした組織や団体も増えてきている。自治体も相談窓口を設け、市報や区報でも精神科が関係するDV、依存症、発達障害の勉強会の告知なども行われている。昔より様々なことが進んでいる。だけど、それらを拾うことのできる人達は、そんなに多くないのかもしれない。

 だとしても、患者を助けたいと涙ぐむおじさん医師がいることは覚えておいてほしい。私は、未だに彼の涙ぐんだ目が忘れられない。

 また、何を言ってるか分からなくなったらから、やめる。しかも薬のんだ後だから頭がまわらない。気が向いたら、推敲するけど、向かなかった放置。精神科医のおじさんの言ってたことを忘れないうちにメモしたかっただけです。

 

おわり。

追記

 アウトリーチや訪問診療・訪問看護についてコメントをいただきましたが訪問診療や訪問看護は、本当に患者側にとってはありがたいことです。医師も病院で、患者の「病院に行けるほど元気な時の様子」「よそ行きの態度」しか見られなのでは正確な診断は困難だろうと思っていました。家の中のちらかり方などでADHDや統合失調の判断もしやすいだろうし、すごく良い活動だと思います。