
- 作者: シェル・シルヴァスタイン,Shel Silverstein,村上春樹
- 出版社/メーカー: あすなろ書房
- 発売日: 2010/09/02
- メディア: ハードカバー
- 購入: 11人 クリック: 84回
- この商品を含むブログ (54件) を見る
少年の成長とそれを見守るおおきな木のお話です。
このお話は、親の子に対する愛情と見ることもできます。私は、なんとなくキリスト教と結びつけて考えてしまって、「神」と「神の子」というふうに見えたりもしました。
なんというか、温かい環境や恵まれた環境で育った人たちは、この絵本を読んだら、きっと慈悲深い愛の話だと思うのかもしれません。いや、実際に一面から見れば「無償の愛」でしょう。確実に。
ここからネタバレ内容
(なので、少し余白を…)
だけど、私のようなひねくれた人間から見ると、「おおきな木」側の何もかも投げうって与える姿の美しさよりも、「少年」側の何もかも奪い尽くすずうずうしさの怖さのほうが、圧倒的にリアリティがあるのです。
もしかしたら、育ちの良い人達、宗教をお持ちの人達にとっては、おおきな木が理想的な姿に見えて、おおきな木のようになりたいと思うのかもしれません。
ですが私のような卑小な人間にとっては、おおきな木になるような理想よりも、ずうずうしい少年のようにならないように気をつけることで精一杯のような気がしています。「いや、君のことを切り倒すなんて、とてもできないよ。」と言える人間でありたい。そこで踏みとどまれる人間になりたい。私にできることはせいぜいそのくらいのことだろうなとしか思えないんです。
私は、自分自身が生きるのでいっぱいいっぱいなので、与える側になるよりも、奪う側になる可能性のほうが高いような気がしています。いや、社会福祉を受けた時点で人様の税金のお世話になった身なので、もうすでに多少は奪った側なのかもしれません。
子供に読み聞かせるのも良いかもしれません。若い人が読めば、愛について考えるきっかけになるかもしれません。そして、大人、あるいは老人にとっては、ものすごく哲学的な問いかけをしてくれる絵本ではないかと思います。
イネイブラー、ギバー(与える人)、テイカー(奪う人)、マッチャー(損得のバランスを取る人)という言葉を調べつつ、この物語を読むと、とても面白いと思います。ちなみに「与える人・奪う人」的なお話はTEDで放映していた気がします。見つかったら見てみると良いと思います。
TEDのギバー&テイカーの話を見つけたので貼っておきますねー。
追記
◆ほんだきんいちろう訳.1976.1

- 作者: シェル・シルヴァスタイン,Shel Silverstein,ほんだきんいちろう
- 出版社/メーカー: 篠崎書林
- 発売日: 1976/01/01
- メディア: 単行本
- 購入: 7人 クリック: 95回
- この商品を含むブログ (106件) を見る
◆村上春樹訳. 2010.9

- 作者: シェル・シルヴァスタイン,Shel Silverstein,村上春樹
- 出版社/メーカー: あすなろ書房
- 発売日: 2010/09/02
- メディア: ハードカバー
- 購入: 11人 クリック: 84回
- この商品を含むブログ (54件) を見る
◆ふじたたまお訳. 1976.9(見つけられませんでした。)
の三人の翻訳があるみたいですね。私は村上春樹、ほんだきんいちろバージョンしかしらないのですが、ほんだきんいちろうのほうがマイルドで抽象的、村上春樹の訳し方は大人っぽく、問題提起風味に寄せてある感じがしました。
◆英語が読める方は原作を読むのが一番良いかも。